※現役小児科医が教える※様子を見続けてはいけない赤ちゃんの発熱は?

乳幼児期は熱が出やすい時期です。

特に1歳未満の赤ちゃんの発熱は、それがはじめての発熱であることも多く、特に初めてのお子さんをもつご家族であればご心配も強いことでしょう。このような発熱は夜間に突然気づくことも多く、時間によっては受診した方が良いのか迷うことも多いのではないかと思います。

この記事では、赤ちゃんの発熱に関する考え方を、疑わしい病気や緊急性などに関して、小児科医がどのように考えているかをご紹介したいと思います。

発熱とは

そもそも発熱とは何度以上の体温のことを言うのでしか?

基本的に医学的には37.5度以上の体温を発熱と考えますが、こども(特に乳幼児期)はもともと平熱が高い子が多く、36度台後半くらいの人が多いので、もちろん状況にもよるのですが、実際には38度以上を注意すべき発熱と考える小児科医が多いのではないかと思います。

生後2〜3ヶ月までの赤ちゃんは37度前後〜37度台前半が平熱です。しかもこの時期の赤ちゃんの体温は環境の温度に左右されやすく、部屋が暑かったり、授乳後や長く泣いていたり、くるんで寝て熱がこもったりすると、38度前後まで体温が上がってしまうこともあります。

ただ38度以上の体温は原則発熱と考えて良いと思います。明らかに部屋が暑かったり、うつ熱のせいかなと思ったら、少し涼しくして、30分後くらいに体温をまた測ってみましょう。それで解熱するなら環境の温度の影響もあるかもしれません。

体温が上昇してくるときには手足が冷たくなることがしばしばあります。体温は38度以上なのに手足が冷たいという場合には、まだ体が体温を上げようとしている場合が多く、さらに熱が上がる可能性が高くなります。参考にして下さい。

他に症状がないかも確認してください。発熱以外の風邪症状はないか?発熱する前は元気にしていたか?食欲はあったか?なども重要です。

こどもの発熱は月齢、年齢によって疑う感染症が違う

こどもの発熱の理由でダントツ多いのは風邪などのウイルス感染です。

生後3ヶ月くらいまでは、お母さんのお腹のなかにいた時に免疫の力(=抗体)をもらっているので、風邪に対しては大人に近い免疫を一時的にもっていることになります。大人はこどもみたいに高熱をだすような風邪ってなかなかかからないですよね。なのでこの時期の赤ちゃんはあまり風邪で熱をだすことは少ないのです。また、この時期の赤ちゃんは風邪をもらうようなところに行く機会も少ないので、それも影響あるかなと思います。

ただこの時期の赤ちゃんは小さければ小さいほど、風邪であっても注意が必要です。風邪であってもこじらせやすかったり、鼻づまりだけでも相当ひどければ哺乳量がおちて入院が必要になることもあります。その風邪症状は生後早期ほど症状が悪化しやすいRSウイルス感染症かもしれません。そして何よりも、発熱の原因が風邪ではなく、重症な細菌感染症の可能性が比較的高い時期なのです。この時期の発熱はもっとも注意が必要な時期の発熱です。一時的な体温上昇で他に症状がない場合には、周囲が暑かったことによるもので病気でないこともあるのですが、そうでない場合には重症な感染症を想定した早めの検査を考えることが一般的です。例えばこの時期の重症な感染症としては、敗血症や髄膜炎、尿路感染症などの細菌感染症があります。これらは風邪とは異なり、抗菌薬が効きますし、自然治癒を目指すことは難しいと考えてください。

生後1ヶ月以内の発熱であれば、熱だけでも入院を考慮します。基本的に生後3か月未満(特に1か月未満)の発熱は受診をためらわないほうがよいと思います。環境の温度の影響を除けば原則受診を考慮した方が良いでしょう。夜間であっても様子を見ない方がよいことが多くあります。特に元気がなくて寝てばかりいる、いつもより明らかに授乳量が少ないという場合には仮に解熱傾向であっても様子を見ない方が無難です。

逆に生後6ヶ月くらいを超えてくると、よく熱を出したり風邪をひいたりするようになります。これはお母さんからもらった免疫の力(=抗体)の効力がなくなる時期だからです。保育園や児童館などでたくさんのウイルスに接触する機会も増えてきます。それまではお母さんの免疫に守られていたものが、その先は自分の免疫をつけていく時期になるので、色々なウイルス感染症に罹患して、免疫がついて治るを繰り返していきます。だからこの時期の赤ちゃんはよく熱をだすのです。

小さければ小さいほど、重症な細菌感染症の可能性はまだあるのですが、それでも全体の中では少数です。ただしヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンなどの予防接種が遅れている場合はやや注意です。これらの重症感染症のリスクがやや高くなります。

また、発熱の有無、体温の高さだけではなく、むしろその期間(何日間続いているか)や、その他の症状のひどさ、本人の全身状態がより大切になります。ねれない程の咳がある場合には、肺炎や喘息を合併しているのかもしれません。胃腸かぜで嘔吐が続いている場合には脱水症に陥っているかもしれません。逆に生後6か月以上の発熱は、熱だけで他の症状はなく元気な場合は、焦って受診しなくてもよい場合の方が多いでしょう。もちろん診察せずに大丈夫の太鼓判はおせませんので、心配が強ければ受診するしかありませんが…。

ウイルス感染症はインフルエンザなどの特別な感染症を除き、基本的には免疫で治る病気です。薬で治る病気ではありません。一般的なウイルス感染症≒風邪に対して処方する薬は、症状をやわらげるお薬です。つらい症状をとるために飲むものなので、症状がない風邪、つらくない風邪に出すお薬は通常ないのです。

小児科医が確認するのは本当に風邪なのかどうか、重症な他の病気を疑う所見はないか、ということなのです。これは全年齢に言えることですが、熱がなくても重症な場合もありますから、熱以外の症状や全身状態もよく観察してあげてください。

生後3歳を超えてくると、熱をだす機会はそれまでより減ってくるのが一般的です。もちろんこれはそれまでどのようなウイルス感染症に罹患してきたかどうかにもよりますので、かなり個人差はあると思います。ただ一つひとつのウイルス感染症に対して免疫ができて大人に近づいてくる時期ですので、常に風邪をひいているということは少なくなるでしょう。重症な細菌感染症のリスクもほとんどなくなってきます。

逆にこの時期に急に高熱が出たりする場合には、インフルエンザとか、プール熱とか、ヘルパンギーナとか、マイコプラズマ感染症とか、溶連菌とか…。もちろん風邪も多いですが、割合としては小児・学童で流行するような感染症の可能性がそれ以前より増えるかなと思います。この時期の発熱が超緊急であることはまれですが、出席停止の可能性がある感染症も多いので注意が必要です。夜間である必要は必ずしもありませんが、症状が続く場合には早めに相談しましょう。

感染症以外の発熱の原因

小児期、特に乳幼児期の発熱の原因は、感染症であることがとても多いのですが、それでも他の理由で発熱が見られることがないわけではありません。

例えば、比較的頻度が高い有名な病気に川崎病があります。これは原因不明の全身の血管の炎症により、発熱が続く病気で乳幼児期にもっとも多い病気です。目が赤くなったり、リンパ節がはれたり、発疹が出たりします。発熱のみで他の症状がなければ川崎病と診断することはできません。もちろん風邪より重症な病気で治療も風邪とは全く違いますが、症状がつらくて薬がない場合、全身状態が悪い場合などを除けば、発熱のみで夜間に受診しても、診断前にやれることはかわりません。

原則的には数時間単位で悪くなる病気ではありませんので、初期対応は風邪と大きくかわりません。そもそも初期は風邪と区別がつかないこともしばしばです。ただ、診断されれば通常は入院加療が必要で、早期治療できたかどうかは後遺症リスクと関係してきますので、全身状態がよくても3-4日続く発熱はやはり日中に小児科を受診する必要があるでしょう

その他にも腫瘍や膠原病などまれな病気で発熱が続くことがあります。これらは、急に発熱して救急外来を受診して気付かれるというよりも、ほかに特徴的な症状があったり、長期間発熱が続いたり風邪を繰り返したりしている人、全身状態が悪くて検査してみたら見つかった、などの経過が診断のきっかけになることが多いと思います。それまで元気だった子が夜間に発熱して、受診して検査をしたら見つかったという流れはあまりありません。それよりもむしろ、1~2週間以上熱が出たり下がったり、なんだか最近元気がない状態が続いているかも・・・みたいな状況で検査をしたら見つかったりするのです。

夜間の緊急受診が必要かどうかは微妙ですが、やはり長引く症状(微熱なども含む)でみつかることがありますから、心配であれば日中受診することをお勧めします。乳幼児期は風邪が多いので、風邪を繰り返しているだけの可能性も多分にありますが、腫瘍や膠原病などの病気の重症度を考えれば、日中に小児科を受診して念のため確認してもらった方が安心でしょう。

基本的に稀な病気というのはたくさん存在します。もともと免疫の問題があって、大きくなっても重症な最近感染症にかかる人もいますし、インフルエンザ脳症みたいに感染症から派生して重篤な状態になるもの、ウイルス性心筋炎のように、発熱はたいしたことなくて風邪みたいだったのに急に具合がわるくなっていくもの、など様々です。家系として定期的に発熱を繰り返すご病気をもった子もいます。この記事に記載されていることは一般的なことなので当てはまらない場合もあると思いますが、その傾向はわかるのではないかと思います。

全年齢をとおして、とにかく元気があるかどうか、呼吸が苦しい、嘔吐が続いている、などの症状が続いていないか、などはとても大切です。発熱の有無にかかわらず、全身状態が悪いと感じたら、やはり一度は小児科を受診することを考えた方が良いと思います。

直ぐに受診しなきゃと思うほどの重症感はなくても、症状が極端に長引く場合も要注意です。稀ではありますが、そのような子の中に緊急性はそこまで高くはないものの(数時間を争うわけではないけれど)、腫瘍や膠原病などの重症な病気がかくれている可能性があるからです。

特定の受診時期を指示することの難しさ 小児科医の立場から

今は非常に多くの情報が散乱していますので、様々な稀な病気の情報がインターネットなどで検索できますよね。非常にまれな話があたかもよくある病気のように感じられて、心配になることもしばしばあるでしょう。

小児科医の立場でいうと、そのような稀な病気であったとしても常にその可能性が0ではないので、少し過剰目に早めに受診しましょうといわざるを得ない部分があります。しかし生まれたばかりの赤ちゃんや全身状態が悪いなどの特定の状況を除けば、多くの発熱はそこまで緊急性はないのです。もちろん日中に一度診てもらった方が安心ですが・・・・

一方で、早く受診することで早期に対応することが可能となり、病気の進展を防ぐことができる場合も確かにないわけではありません。ただ、非常にまれな可能性まで考慮して、なんでもかんでも早めに受診というのは簡単なのですが、受診すること自体が本人やご家族の負担になる場合も多いのではないかと思います。

全ての可能性を考慮すれば、結局心配ならどんな時も受診して確認してもらうしかないという結論になってしまいます。しかも、小児科医も万能ではないので、稀な病気を病初期に受診しても見つけられない可能性は多いにありますよね。

そう考えると大変難しい問題です。わが子を守りたいと考えるのは両親であれば当然です。でも、飛行機は墜落するかもしれないから(非常に非常にまれな例ですが)、飛行機には乗らないとい決めているという方は決して多くありませんよね。結局は一般的な判断の範囲内であれば、ご家族が自己責任で納得のいくようにするしかないのかなとも思っています。

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