赤ちゃん、特に生後1-2か月くらいまでの間のうんちの色は、成人や幼児期以降のうんちとは明らかに異なります。
この時期の赤ちゃんのうんちは、「黄色」と「緑色」が正常です。
緑色のうんちをみて少し不安に思うご家族もいるかもしれませんが、心配になったら母子手帳を見てみましょう。
そこに1か月の赤ちゃんのうんちの色のバリエーションがかかれています。
4番より濃い色がこの時期のうんちの色として良い色ですので、緑色のうんちはこの時期は普通なのです。
この記事では、赤ちゃんのうんちの色の考え方を小児科医の視点でご紹介したいと思います。
赤ちゃんのうんちはなぜ緑色なの?
そもそもうんちにはなぜ色がついているのか、その理由をご存知でしょうか?
実はうんちの色はもともとは胆汁の色です。
胆汁は脂肪を吸収するために必要な消化液が入っており、肝臓で作られ胆のうにためられた後、食事(赤ちゃんの場合は授乳)に合わせて腸の中(十二指腸)に排泄されます。
胆汁中にはビリルビンという黄疸の成分がたくさん入っていて、これが胆汁の色を決める主要な成分なのです。
胆汁は濃い黄色~緑色の液体でこれがうんちの色のもとになっています。
細かい話はおいておくと、この色が腸内細菌の働きで、または空気との反応などによって酸化されることで、黄色っぽくなったり緑色っぽくなったり変化すると考えてください。
基本的に生まれたばかりの赤ちゃんは、腸内細菌が少なく、腸内細菌の種類も成人のものとは異なる傾向があります。
そのため、胆汁中の成分(ビリルビン)が変化せずにそのまま出てきやすいことが影響して、緑色のうんちが出やすくなります(主要な理由です)。
基本的にこの時期の赤ちゃんのうんちの色が緑色であることに病的な意義はありません。
どのようなうんちの色なら病的なの?
病的な色の可能性があるものとしては、白色(クリーム色=うんちの色がうすい)、赤色(血便)、黒色があげられます。
1. うんちの色が白い
白色は元々の色がない(胆汁の色がついていない)わけですから、胆汁の流れが悪くなるような病気を疑うきっかけになります。
黄疸のもとになっている物質であるビリルビンは、胆汁の中に排泄されるのですが、これがうまく排泄されない状態(胆汁うったい)では、黄疸が出てうんちの色が白っぽくなります。
これは特に1か月前後の赤ちゃんにとっては重要な所見で、この時期にみつかることがある「先天性胆道閉鎖症」という病気では、うんちの色が白っぽくなって黄疸が強くなります。
この病気は一般的に生後早期に手術をする必要があり、それができなければ肝移植が必要になる病気なので、小児科医はこの病気を決して見逃さないように注意しています。
母子手帳の赤ちゃんのうんちのスケールで3番以下のうんちの色のうすさの場合には、この”胆汁うっ滞”を疑うことになります。
またその他にうんちの色が白くなる病気として、冬に流行しやすいロタウイルスの感染症(急性胃腸炎)があります。
この病気は通常ひどい下痢をして、授乳ができなくなったり(食欲がなくなったり)、嘔吐したりしますので、うんちの色以前に具合が悪くなって受診が必要な病気です(生後早期は入院が必要になる可能性も多分にあります)。
2. うんちの色が赤い
赤色のうんちは血便を疑いますので、やはり受診を考慮すべき状態です。
生後早期のごく少量の血便は、母乳栄養の方に認められるリンパ濾胞過形成(問題ありません)、肛門部の粘膜損傷(急性胃腸炎に伴う頻回の下痢、浣腸刺激のための綿棒による損傷)などの可能性もあり、特に問題ない、緊急を要さない場合も多くあります。
その他としては、赤ちゃんでも時々痔が原因で血便になることがあります。
また、生後早期の赤ちゃんではミルクアレルギーが原因で血便がでることがあります。
その他、頻度は高くはありませんが、急性胃腸炎(特に細菌性胃腸炎)や、腸回転異常症、腸重積、メッケル憩室などの手術が必要になるかもしれない疾患では、時に非常に重症な状態になりえますので、特に血便以外の症状(元気がない、吐いている、おなかが非常にはっている、など)がある場合には、早めの受診を考慮すべきでしょう。
ちなみに腸重積は新生児期に発症することはほとんどありません。
腸回転異常症は生まれた時からの病気なのですが、腸がねじれた時に症状が出るので、気づかれにくい場合があります(自宅に帰ってから急に発症することがあります)。
3. うんちの色が黒い
うんちの色が黒い場合には、通常、上部消化管(胃など)からの出血を疑います。
血液の成分が胃酸と反応すると黒っぽくなるからです。
生後早期(1週間くらい)の時期を除き、新生児にこのようなうんちが出るのは多くはありません。
比較的多い理由は、おっぱいの乳頭が切れていて、血液の一緒に飲んでいる場合(お母さんの血液が胃酸と反応して黒っぽいうんちがでます)、鉄剤を内服している場合、などでしょうか・・・。
また、比較的濃い緑色のうんちが出ている場合には、見た目上黒っぽく見える場合もあります。
判断ができない場合には、うんちに血液の成分が出ていないか、検査をするとわかります。
やはり黒っぽいうんちが続く場合は受診を考慮した方が良いと思います。
赤ちゃんのうんちの色の変化
赤ちゃんは生後、離乳食を開始したり、腸内細菌の種類や量が変化するに従って、うんちの色が性状、においが変化してきます。
時々、生後1歳とかそれ以上の年齢で、うんちの色が一時的に緑っぽくなったと相談を受けることがあります。
このような場合でも、他に何も症状がなく、診察しても特に問題がないことが確認できれば、そして一時的な症状なのであれば、様子をみることになるのかなと思います。
ただ、これには腸内細菌の種類や量が病的に変化している可能性が考えられるので、例えば胃腸炎にかかっていたり、抗菌薬を内服している影響で腸内細菌のバランスが乱れているなど、病的な状態と関係しているのかもしれません。
経過によってはやはり検査が必要になることはありえるでしょう。
最近、腸内細菌の種類や量が全身の様々な病気のリスクと関連していることがわかってきています。これはDOHaD学説の中でもメインテーマの一つになっていますので、生後早期からよりよい腸内細菌を獲得しようという流れは、もっと盛んになってくるかもしれません。
(また別記事で紹介していきたいと思います)