※現役小児科医が教える※赤ちゃんの便秘に対する対応

生まれたばかりの赤ちゃんの便秘で悩むご両親は意外と多いのではないでしょうか?

実際に、「最近、便秘気味なんです」という相談をうけることは1か月健診では珍しくありません。

本記事では、赤ちゃんのうんちの量や回数について、特に生後1〜2ヶ月までの児に焦点を当てて、小児科医の視点からご紹介したいと思います。

 

赤ちゃんのうんちの回数

新生児期(生後1か月くらい)の赤ちゃんのうんちの回数はどのくらいが正常だと思いますか?

平均的には1日5~6回くらいが目安となりますが、これにはかなり個人差があります。

授乳のたびに(1日8~10回以上)、少量ずつ(たまに多く)でているという赤ちゃんも多いですし、逆に1日1回しか出ないとか、1か月健診頃になると2~3日に1回くらいしか出ないという赤ちゃんも時々います。

ただうんちの回数だけでいえば、これらはどれも異常とは言えません。

これは、正常でもそのくらいの回数の赤ちゃんは全然いるよという意味で、特に病気ではないのに、4~5日に1回しか出ないという赤ちゃんを経験することすらあります。

おおざっぱに言えば、基本的に1日1回程度うんちが出ていれば便秘と考える必要はなく、それ以上うんちの間隔があく場合でも、特に他の症状・所見を伴わない場合は、綿棒やこより刺激などでしっかりでてくれるのなら問題ない場合の方が多いのです。

ただ、このような”便秘がち”の赤ちゃんの中に、重大な病気の赤ちゃんが隠れている可能性は確かにあるので、それが病的かどうかの判断が必要になることも付け加えなくてはいけません。

それではどのような”便秘がち”の赤ちゃんが、病的な可能性のある注意すべき赤ちゃんと考えるべきなのでしょうか?

 

便秘の赤ちゃんで注意すべき症状

病的な便秘であるか否かの判断には、①体重がきちんと増えているか、②おなかがはっていないか、③出る時はしっかり出ているか、などが重要になります。

①体重がきちんと増えているか

単純に授乳量が少ないことが原因で、うんちの回数も少ないという赤ちゃんがいます。

この場合は、うんちの量、回数が少ないこと自体より、授乳量や体重増加が少ないことの方が重要ですね。

当然そのような場合には、授乳指導を行う、必要に応じて人工乳を追加する(または増やす)などの対応が必要になります。

②お腹がはっていないか

病的なおなかの張り

いわゆる病的な便秘(=排便回数および量の減少)が疑われる場合です。

うんちを出しにくいことで、お腹がはってきて苦しくなり、授乳量が少なくなったり嘔吐を繰り返すこともあります。

極端な場合には相当具合が悪くなる可能性もあるので注意が必要です。

例えば 生後早期の便秘でお腹が病的にはるものに、ヒルシュスプルング病という病気があります。

生後の極早期に見つかりますが、この病気の中で比較的軽いものの場合には、1ヶ月健診くらいにみつかることもあります。

とにかくお腹がはって、綿棒なこより刺激で堰を切ったようにたくさんのうんちが出る、自力ではなかなかうんちが出ず、出ても少量しか出ない、というような経過でしょうか。

ヒルシュスプルング病だけではなく、うんちがでない症状に合わせて、お腹がはっている、急に吐くようになった、元気がない、などの症状が重なる場合には、基本的に受診を考慮した方が良いでしょう。

ちなみに病気ではなくても、生後早期はお腹がはりやすい時期なので注意が必要です。

おっぱいやミルクをのむのが下手くそで、空気を一緒に飲んでしまうからです。

飲んだ空気は排気で出してあげないと、胃腸を通って”おなら”として出てくるのを待つしかありません。

このような場合には、ガスでお腹がはってしまい、おなら多くなります。

このような児は、のむのが下手くそな未熟児だった赤ちゃんなどに多い傾向があります。

このような場合には、とにかく排気(ゲップ)をしつこいくらい頑張った方が良いです。

実際には、のませた後にすぐ寝かせずに、縦抱きにして10分とか20分とか長めに排気の時間をとる、授乳時間が長い場合には、授乳の間(例えば片方が終わってもう片方にいく前など)に排気させる、などの対応をすすめています。

③出る時はしっかりでているか

うんちが1日おきにしかでないという赤ちゃんでも、出る時にはしっかり出るという場合には、病的ではない可能性が高いと思います。

うんちはほとんど毎日出ているけど、出ても少量ずつしか出ない、多量に出ることはない場合には少し気になる症状です。

先程紹介したヒルシュスプルング病の軽症タイプではそのようになることもありますし、脊髄からくる排便機能の異常でも同様の症状になる場合があります。

うんちは出るけど、常に大部分は残っていて、押し出されるように少量ずつ出す感じです。

おなかもはり気味になります。

脊髄からきている症状の場合には、おしりの上のところに”くぼみ”があることがあり、要注意な所見です。

やはり、一般の方が自己判断するのは危険なので、心配があれば、小児科に相談されるのが良いと思います。

 

赤ちゃんの便秘への初期対応

赤ちゃんのうんちが少ないかなと思ったら、綿棒やこよりでの肛門刺激(綿棒浣腸)をおすすめしています。

具体的には、綿棒の先の白い部分にベビーローション、または、ベビーオイルをつけて、肛門部に綿棒の白い部分を入れて、ゆっくり回します。

綿棒やオイルは市販の綿棒で構いません。

これできちんとしたうんちが出て、他に症状もないなら、重大な病気の可能性は低いでしょう。

時々、綿棒浣腸しないとうんちが出ない、あまり続けているとクセになるのでは?と躊躇される方がいますが、過剰な心配は必要ありません。

そもそも便秘になりやすいような他の原因がなければ、1歳くらいまでには自力で出るようになることが普通ですし、綿棒浣腸をしたから便秘が治らなくなるというものではありません。

むしろ、便秘が続いていると、大腸の出口部付近に常にうんちがあることで、腸が広がってうんちがたまりやすくなりますから、定期的に出ていてくれた方が良いのです。

生後早期の新生児期に(自宅に帰ってから)、うんちが固すぎで出ないということはあまりありませんので、この時期にうんちの固さが便秘の原因になっていることはあまりないといっていいでしょう。。

(胎児期のうんちが出にくい病気はありますが、退院までには解決しているはずです)

綿棒で乱暴にやって肛門の粘膜を傷つけてしまう・・・といったことがないように注意は必要ですが、便秘に関する心配があるのであれば、もしうんちがでなければ1日1回程度の綿棒刺激をお勧めすることはあります。

おなかが張っていないければ、1日1回うんちが出る必要は必ずしもないのですが、おなかが張っているかの判断が、一般の方には難しいと思うからです。

乳時期後半以降は離乳食の開始などに伴って、便の性状は変わってきますし、便秘に対する考え方も変わってきますので、別記事で紹介したいと思います。

※現役小児科医が教える※こんな赤ちゃんのうんちの色は要注意!についての記事はこちら

 

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