赤ちゃんが泣き止まない・・・・
多くの新米ママ、新米パパは一度は経験し、不安に思うことも多いのではないでしょうか。
「おっぱいあげたばっかりなのにな」
「なんか具合が悪いのかな」
「おむつも変えたばかりなのにな」
この記事は、「泣き止まない赤ちゃん」についての小児科医の視点をご紹介します。
泣き止まないパターン
なかなかベッドにおけない
典型的な例
赤ちゃんが泣き止まないパターンにもいくつかありますが、生後早期の赤ちゃんに最も多いのが、母乳(やミルク)をあげたあと、ベッドに寝かせると泣く、というものかと思います。
抱っこしてあやしたり、おっぱいをくわえさせると、しばらくして泣き止むのですが、また置くと泣くの繰り返しです。
お母さんはいつまでたっても休めません。
もしかしておっぱいが足りていないのかな…と不安になりますよね。
実際に母乳不足で同じような経過になることもありますが、体重を測ってみるとしっかり体重が増えといるのに…泣くのです。
だからこのような感じで赤ちゃんが泣き止まないことを、過度に心配する必要はありません。
基本的に赤ちゃんは言葉は話せないし、寂しいって言えないわけですから、抱っこしてほしいだけなのかもしれませんよ。
母乳の不足が疑われ、体重を測定したり、必要に応じて人工乳をあげた方が良い場合も当然ありますので、心配であれば小児科医や助産師さんに相談しましょう。
ただ、体重も増えていて、オムツも替えていて、やることをやった上で泣いているなら、「抱っこしてほしいのかな」とか、「かまってほしいのかな」とか、考える心の余裕も大切だと思っています。
赤ちゃんは、泣くのが仕事です。
小児科医の視点では、泣かないことが問題になることは多々ありますが、泣くことが問題になることはそう多くない、というのが原則です。
重症な子は元気がなくなることがむしろ多いからです。
もし病気を念頭におくとしたら
このようなパターンの泣き方で、ケアすべき状態・病気の一つとして、胃食道逆流症があります。
これは、飲んだ母乳やミルクがいったん胃に入ったあと、食道に戻ってきやすい病気です。
この病気の原因は、胃の食道側の筋肉が緩みやすいことが関係しています。
生後早期(特に新生児)は正常でもこの筋肉が緩みやすい傾向があり、生後まもない赤ちゃんはよく吐きます。
胃食道逆流症がある児では、頻回の嘔吐がみられて体重がふえにくくなったり、母乳が上がってくることで気持ち悪くなるのか、よく泣くなどの訴えがある場合があります。
このような児によく泣くからといって、沢山の乳汁を飲ませると、胃食道逆流症が悪化するため逆効果になることがあります。
軽度の胃食道逆流症に対して自宅でまずできることは、授乳後に縦抱きにしてすぐにベッドに寝かせないことです。
よく泣く児はまずはやっぱり抱っこしましょうということになりますね。
胃食道逆流症に関しては、症状の程度に応じてステップアップして治療を行いますが、それに関してはまた別記事で紹介します。
突然泣き出してなかなか泣き止まない
典型的な例
乳児期後半以降に多いパターンです。
夜泣きとか、寝ぐずりとかも、この部類でしょうか・・・。
後は、結局泣いていた理由はわからなかったりします。
「泣き止まない」といって救急車で来院した児が、救急外来では泣き止んで機嫌よくしていて、きまりが悪そうなご両親に出会うこともあります。
やはり赤ちゃんは言葉は話せないので、何か不快な思いがあったのかもしれません。
怖い夢をみたのかもしれないし、眠くてつらかったのかもしれません。
結局は本人にしかわからないのですが、それが病気の徴候であるというのは意外と多くはないのです。
もし病気を念頭におくとしたら
普通に頻度が高い原因は、単純に風邪に伴う発熱で機嫌悪い、鼻づまりで息がしにくくて機嫌悪い、室温が暑すぎる、などがあるでしょう。
でもこれは泣き止まないというよりは、不機嫌といった感じでしょうか。
風邪症状があれば、それが原因かもと一般の方でも疑えるので、心配にはなるとは思いますが、泣き止まないことを悩むといった感じではないかもしれません。
発熱もなく元気な風邪気味の児が、急に不機嫌で泣き出す経過の場合には、やはり中耳炎による耳の痛みが気になるところです。
また、突然の不機嫌・泣き止まないなどの症状で、何かあやしいエピソードがあれば、外傷(骨折など)を疑うこともあります(幼児期以降の肘内障なども同様です)。
乳幼児期(特に生後1歳くらいまでの乳児期)に、突然泣き止まない症状→受診時は泣き止んで普通・・というパターンの中には、小児科医としては腸重積という病気もケアしなくてはなりません。
「泣き止まない」→「児が泣き止んだので大丈夫?」と思っていたら、嘔吐や血便が出て・・・このような場合には早めに受診を考慮した方がよいです。
腸重積の場合にありえる経過だからです。
腸重積では、間欠的腹痛(痛かったり痛くなかったりする)が特徴です。
腸重積は時間がたつと手術になるリスクが増えてしまいますので、早めに相談する必要があります。
ちなみに生後1か月までの新生児期に腸重積が起こることはほぼありません。
腸重積については別記事でまた紹介したいと思います。
泣き止まない赤ちゃんに対する対応
生後2〜3ヶ月まで
特に新生児期でほかの症状を伴わない場合は、母乳が足りているかをケアしながら、オムツを確認して清潔にし、まずは抱っこで対応することになりますよね。
その際に抱っこて泣き止むならまあ通常は大丈夫なのではと思います。
やっぱり抱っこしてほしい、お母さんやお父さんにかまってほしいという理由で泣く赤ちゃんは多いものです。
縦抱きにして、しっかり首を支えながら包み込むように抱っこするのが安心しやすいと思っています。
泣き止まなければ、優しく縦にゆれるのも効果的です。
一回の授乳時間が長い、授乳間隔があかない、などは母乳不足を疑うサインにはなりますが、心配ならやはり体重を測定することをおすすめします。
体重はしっかり飲めているかの客観的な指標になります。
病院や産院で測定する他に、レンタルの赤ちゃん用の体重測定器などを準備するなどの方法があります。
嘔吐が多い、ぜろぜろが激しい、授乳後にむしろ不機嫌になるような場合には、胃食道逆流症なども考え、早めに受診したほうがよいかもしれません。
そのほかの症状(鼻水や咳、お熱など)がないか確認しましょう。
この時期は風邪であってもこじらしたりしやすい時期なので、早めに受診しましょう。
特に発熱を伴う場合にはあまり待つべきではありません。
生後3~6ヶ月以降
突発的に泣いて泣き止まない場合には、まず下記を確認しましょう。
●赤ちゃんは眠れなくてつらくなっていませんか?
●室温は適温ですか?
●怪我などをしている可能性はありませんか?
●風邪症状などありませんか?
これから熱が出る、体がだるいなどが原因のことがあります。耳を触っていませんか?中耳炎かもしれません。
●嘔吐や血便はありませんか?
特に血便は、腸重積の可能性を考え、いったんは泣き止んだとしても、すぐに夜間でも受診を考慮した方が良いかと思います。
特に病的な理由がない場合には、少し散歩したり、ベランダがあれば外に出て、外の空気を吸ったり、それだけで泣き止むことも多いので試してみましょう。
時には、深呼吸して「しょうがないな」とある程度許容することも必要なのかもしれません。
早く泣き止ませたいという焦りが伝わっているだけなのかもしれませんから・・・
それから、赤ちゃんは理由がなくとも泣くことがある、というのも事実だと思います。たぶん赤ちゃんなりの理由があるのだとは思いますが…すべてをわかってあげることは不可能です。必ずしもお母さんやお父さんが悪いわけではありませんので、もっと自分を正当化しましょう。
あまり泣いている理由を明らかにしようとしすぎない方が良い場合もあるかなと思います