赤ちゃんの頭の形を気にされるご両親は意外と多く、1か月健診でもよく質問されます。
「頭の形に左右差があって、右側(左側)が平らになっている 」とか「右(左)ばかり向いている」など、向き癖と合わせてご相談を受けることが多いのですが、このような頭の形の左右差や向き癖はなぜ生じるのでしょうか?
赤ちゃんの頭の骨は柔らかく変形しやすい
ご存知の方も多いと思いますが、生まれたばかりの赤ちゃんの頭蓋骨には、骨と骨とのつなぎ目があります。
この骨と骨とのつなぎ目は骨縫合といわれ、これによって新生児の頭蓋骨は大きな4個の骨の板があるような構造になっています。
分娩時にはこの骨の板がお互い重なって頭を小さくすることで、狭い産道を通ってこれるようにしているのです。
また、生後の赤ちゃんの頭蓋骨は、つなぎ目から骨が成長することで脳の成長に合わせて頭の形を整えていけるのです。
違う言い方をすれば、この時期の頭蓋骨は柔らかく形も完全に決まっていないので、外的な力の影響を受けやすいのです。
通常、生後1-2か月の赤ちゃんはまだ首もすわっておらず、寝返りもできません。
そのため、片側を向いて寝ていると、下にしていた頭の部分が少し平らになってしまい、”落ち着きやすい頭の位置”ができてしまいやすいのです。
そのような場合には、右向きにばかりしないようにと左を向かせても、すぐにコテンと落ち着きやすい位置(=右向き)に戻ってしまうのです。
そうすると頭の形は自然とそれにあった形になりやすくなるのです。
同様の理由で、未熟児で生まれてNICUに長く入院していた児などでは面長な頭の形になりやすい傾向があります。
通常、NICUでは数時間おきに左右の頭の位置を変えるので左右差は出にくいと思いますが、子宮内で羊水に浮かんでいるように育った胎児でと比較すると、均等に頭に圧力がかからない状態で成長していかなくてはならないからです。
様子見て大丈夫?
結論から言えば、生後1~2か月の赤ちゃんの頭の形は、寝返りなどする機会が増えて、頭蓋骨に均等に圧がかかることが多くなれば、自然と調整されてくることが一般的であるといえます。
もちろん”まん丸”というわけにはいきませんが、少なくとも目立たなくなるようになります。
そのため、1か月健診で頭の形、向き癖について相談を受けた場合には、そのようにお話しして「心配しすぎないよう」にとお話をしています。
ただし、頭の形の変形がやや目立っている場合、ご両親の心配が強いような場合には、「なるべく向かせたい方向に赤ちゃんが気になるもの(おもちゃや音が出るもの)を置きましょう」とか「向かせたい方向からなるべく話しかけてみましょう」などと指導しています。
日本では「そのうち目立たなくなるので気にしすぎないように」というスタンスの小児科医が多く、実際に問題ないことがほとんどなので過剰な心配はしなくてよいのではと思います。
一方で、海外では頭の形を矯正する通称”ヘルメット外来”が行われている国もあり、日本でも一部の施設でこのような介入が行われていますが、基本的に地域が限られますし自費診療なのでなかなか選択できる環境にはない方が多いのではないでしょうか・・・・。
確かに頭の形の左右差が大きいと、バランスがとりにくく歩行開始に影響が出るなどの懸念を指摘する声もありますし、美容上やはり気になるという方もいるのは理解できます。
市販の赤ちゃん用の枕や向き癖防止のクッションやタオルを使用することが有効な場合もあり、興味があれば試してみるとよいでしょう。
また、大変稀ではありますが、頭の形が変形する生まれつきの頭蓋骨の病気もあるので、ご心配があるようなら健診などで小児科医に相談してみるとよいでしょう。