一般に妊娠期間は十月十日(とつきとうか)などといわれます。正確に言うと、分娩予定日は精子と卵子が受精してから40週0日になります。正期産は分娩予定日の周囲も含めて、37週から41週までなので、これより早く産まれた場合が早産です。早産も22週から36週まで幅広いので体重も状況も赤ちゃんによって様々ですが、早産児の予防接種には原則があります。この記事では、早産児の予防接種はどのようにすすめたらよいのか、その原則を紹介します。
早産児の予防接種の原則
結論からいうと、早産児の予防接種の原則は次のようになります。
- 早産児であることを理由にできない予防接種はない(むしろ感染症にかかると重症化しやすいので早めに済ませた方がよい)。
- 正期産児と同様に暦どおりの月齢(予定日からではなく産まれた日からの月齢)で、予防接種をすすめる。
- パリビズマブ(シナジス)は原則対象となる児の全例に勧められ、特に未熟性の高かった児や肺機能が悪い児では必須と考えてよい。他の予防接種との相互作用はなく、同時接種や翌日接種も問題ない。
NICU入院中から始められる予防接種
早産児に対する予防接種は、通常正期産児と同様に暦どおりの月齢(予定日からではなく産まれた日からの月齢)で、はじめることができます。
基本的に体重は関係ありません。
なので、長期にNICUに入院する早産児は、NICU入院中から予防接種を始められます。
…とはいってもロタウイルスの予防接種は、開始可能時期が生後6週間と早いこと、そもそもロタウイルスの予防接種は経口投与で生ワクチンのため、通常NICU内ではしない施設が多いのではないかと思います。
それ以外だと、ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチンが生後2ヶ月から行えますので、出生時の在胎週数が30週前後の場合には、退院する予定日前後(生後2ヶ月過ぎ)に1回目の予防接種をして退院する場合も多いのではないかと思います。
20週台半ば未満の場合も、生後2ヶ月から始められますが、通常呼吸の状態などが安定してから予防接種を始めることが多いので、体重は関係ないとは言っても、2キロくらいになって退院が現実的になってからの予防接種が多いかなと思います。
また手術や輸血が必要だった児は、少しそこから予防接種まで時間をあける必要がありますので、退院近くまで予防接種を始められない場合もあります。
ただ、退院した後の医療機関への受診回数は少ない方がよいので、可能な限り入院中にできる予防接種はしてしまおうというのが多くの小児科医の考えかたなのではないかと思います。
ちなみに、RSウイルスに対する予防接種は、流行期に退院する場合には、退院数日前に初回投与することが一般的と思います。
その後は1ヶ月に1回の予防接種です。
筋肉注射なので、通常の予防接種よりも痛いと思います。
また、7キロを超える頃から、両方の大腿部に2回に分けて注射する必要がでてくるため、大きな子は外来で2倍痛い思いをすることになります。
早産児なら早めに予防接種を進めましょう
早産児は見た目苦しそうではなくても、呼吸機能の予備力がない場合が普通です。出生体重が1,000g未満で生まれた超低出生体重児の場合、小学生から中学生ころになっても呼吸機能が悪い人が多いことがわかっています。
特にNICUを退院したばかりの早産児は呼吸の予備機能があまりないので、風邪をひいただけでも、相当呼吸が苦しくなったり、酸素の数値が下がったりしやすい場合があります。
早産児であることを理由にできない予防接種はありませんし、上記のように呼吸器感染症による悪化のリスクが高いので、むしろ早めに予防接種をすすめることを強くお勧めします。
早産児は喘息にもなりやすいことがわかっています。
乳幼児期を無難にすごすことができれば、そのようなリスクはだいぶさがりますので、感染症にかかりやすい生後早期はとにかく感染予防に留意することが必要です。
予防接種の進め方については、通常早産児の場合は退院前に担当医から説明があると思いますので、わからないことがあればしっかりと確認することをお勧めします。