※現役小児科医が教える※あなたの赤ちゃんは大丈夫?乳児期に十分な鉄分が必要な最大の理由

鉄分は体内で必要不可欠な微量元素です。

では乳児期に鉄分が不足すると、どのようなリスクが生じるかご存知ですか?

本記事は乳児期に十分な鉄分が必要な理由について紹介したいと思います。

赤ちゃんは貧血になりやすい

鉄分の不足というと、多くの方は貧血を思い浮かべるのではないでしょうか。

血液中で酸素を体中に運ぶ役割をもつヘモグロビン(赤血球の中にあります)は、鉄分がないとつくることはできません。

血液中にヘモグロビンが少ない状態がいわゆる”貧血”であり、鉄分が不足することで生じる貧血を、鉄欠乏性貧血といいます。

生まれてきた時の赤ちゃんは、通常は”多血”の状態で生まれてきます。

“多血”というのは貧血の逆で、血液中にヘモグロビンが多い状態です。

生まれてきたばかりの赤ちゃんは、血が濃いんです。

これが皮膚が大人より赤っぽくなりやすい理由のひとつ、すなわち赤ちゃんが”赤ちゃん”たる所以です。

このように、赤ちゃんは生まれた時には血が濃い状態なのですが、急激な体重増加に伴って血液が不足するので、たくさんの血液をつくる必要がでてきます。

生後2〜3ヶ月にもなると、赤ちゃんの血はうすくなり、一部はヘモグロビンの材料である鉄分が不足することで、その後病的な貧血をきたすようになります。

特に生まれた時に早産だったり、小さかったりした場合は要注意です。

早産低出生体重児では、乳児期の貧血のリスクが高いことがわかっています。

また、経験的には、母乳栄養の赤ちゃんでは鉄欠乏になりなすい傾向があり、生後4ヶ月を超えてから乳児期後期にかけて、特に離乳食の進み方がゆっくりな場合には注意しておく必要があります。

鉄欠乏性貧血に伴う乳児の症状はなかなか一般の方には判断し難いのではないかと思います。

大人だと立ちくらみが見られたり、疲れやすかったり、でも赤ちゃんはそんなこと教えてくれませんから。

やはり乳児の場合も疲れやすくて元気がなかったりもするのですが、単純に顔色が蒼白だったり、そのほかにも心拍数が早めだったり、心雑音が聞こえたりしやすくなります。

生後半年前後の赤ちゃんでは、顔色などから鉄欠乏性貧血の疑いをもつなら、小児科医に相談することをおすすめします。

鉄分は脳神経の発達に重要な役割を担っている

実は、鉄の役割はヘモグロビンをつくるのに必要なだけではありません。

鉄は乳児の脳神経の発達に必要不可欠な微量元素なんです。

それが乳児期の赤ちゃんに十分な鉄分が必要な最大の理由です。

もちろん貧血のリスクも大切ですけどね。

鉄欠乏に伴う貧血自体で、死んだり後遺症を残したという話は、今の日本ではまずありえないでしょう。

また、貧血とならない程度の鉄欠乏でも、将来の脳神経発達と関係することを示す報告もありますので、貧血がなければ良いというものではないのです。

ちなみにお母さんが鉄欠乏という理由だけで、母乳の中の鉄分が不足することはありませんので、赤ちゃんの鉄欠乏の治療のために、貧血のお母さんに鉄剤を飲んでもらうことには意味がありません。

早産低出生体重児や、離乳食の確立が遅れている完全母乳栄養児などは、鉄欠乏のハイリスク児と考えられ、鉄欠乏がないか注意が必要であり、鉄分の補充についても考慮した方がよいのです。

実際に2017年に改定された新生児に対する鉄剤投与のガイドラインでは、早産児はある程度母乳やミルクが飲めるようになったら、鉄剤の内服を開始し、離乳食が十分確立するまでは内服を継続することが推進されています(僕はこのガイドラインの改定委員をしていました)。

これは日本のガイドラインですが、海外のガイドラインも多少の違いがあるものの、似たようなことが推進されています。

鉄剤を飲んだら、脳神経の発達がよくなるという証拠まではないのですが、鉄は内服で過剰状態になることは通常ないことがわかっていますので、飲ませておいた方が無難であると判断して差し支えありません。

頻回の輸血などで、体内の鉄過剰の状態にある児はそのかぎりではありません。

鉄分の多い離乳食をとろう

ここでは鉄分の多い離乳食を紹介します。

やはり最初に思いつくのはレバーです。なかなかレバー料理をすることもないかもしれませんが、市販のレバーペーストなどを活用するのもよいでしょう。

後はひじき、納豆、高野豆腐、小松菜、ほうれん草、青のりなどがあげられます。

今は書籍やインターネットでたくさんのレシピが紹介されていますので、参考にされるのがよいと思います。

アレルギーなどを心配するあまり、離乳食をなかなか進めたがらないお母さんをたまにみますが、摂取しないことが逆に後のアレルギーの原因になる場合もあります。

アレルギー症状が懸念される場合にはかかりつけ医と相談してください。

むやみに開始時期を遅らせることのないように配慮が必要です。

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